若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
「ショーン……!」

 ジョンズワートが見間違えるはずもない。その小さななにかの正体は、ショーンであった。
 振り返った我が子が、なにかを頬張っていることもわかる。お菓子だろうか。
 ジョンズワートの姿を確認したショーンは、黙ったまましゃくしゃくとお菓子を吸い込んでいく。

「しょ、ショーン……?」

 ようやく見つけた息子は、毛布にくるまって暖炉にあたり、お菓子を食べていた。
 そのうえ、実父である自分を見ながら菓子を胃に収めた。
 暖炉の周囲には柵があり、必要以上に近付けないよう工夫されている。
 これは一体、どういうことなのだろうか。
 状況を把握するためにもショーンに近づこうとしたところ、お菓子を食べ終わった幼子が、せきを切ったように泣き出した。
 それはもう、わあわあと。

「ごめん、ショーン。もう大丈夫。大丈夫だから」

 我が子に駆け寄り、落ち着かせるように抱き寄せる。
 なにがどうなっているのかわからないが……まずは、ショーンを落ち着かせるのが先だと判断した。ひとまず、危険はないように思える。
 そんなことをしていたら、泣き声が聞こえたのだろうか。
 カップを手にした老婦人が、あらあら、と言いながら奥から出てきた。

「あなた、この子のお父さんね? よかったわあ」

 髪は白く、恰幅のいい老婦人。ジョンズワートとショーンに向ける言葉には、優しさと安堵が滲んでいた。
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