若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 8年も経っているのに、ジョンズワートはまだ彼女に執着していた。
 それを知る妹や、妹の侍女のサラには、怖い、気持ち悪い、と若干引かれているぐらいだ。
 周囲の女性が怖いと言うような具合なのだ。
 カレンにとっても、ジョンズワートは何年経っても自分に執着し続ける気持ちの悪い男かもしれない。

「父の件は、きみも知っているよね。色々大変だったけれど、最近、少し落ち着いてきて。ようやく、正式に話をしに来れたんだ」

 父を亡くし、若くして公爵となったジョンズワートは多忙で、結婚どころではなかったのも本当だ。
 けれどそれは言い訳でもあって。
 今はまだ忙しいから考えられないと言えば、結婚を先延ばしにすることができた。女性たちから逃れることができた。
 カレンに浮いた話がないことにも、ジョンズワートはほっとしていた。
 愛しいあの子は、まだ誰のものにもなっていないのだと。安心していたのである。
 自分でも、嫌な男だと思った。

 汚い男かもしれない。カレンにとっては、本当に拒絶したい存在かもしれない。
 でも、それでも。

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