若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 カレンがジョンズワートの求婚を受け入れたことは、すぐに屋敷中に広まった。
 カレンの両親は、それはもう大喜びで。娘をよろしくお願いします、と何度も何度もジョンズワートに頭を下げた。
 家族だけではない。メイド。執事。コック。庭師。とにかく、もう全員がカレンとジョンズワートを祝福している。

「おめでとうございます、お嬢様」
「やはりジョンズワート様とご結婚なさるのですね」
「ずっと応援しておりました」

 みな、口々にそのようなことを言う。
 しまった、とカレンが思った時にはもう遅く。撤回なんてできる状態ではなかった。
 デュライト公爵家への報告がまだなら、今からでもなんとかなったかもしれないが……。

「カレンを……お嬢さんを、必ず幸せにしてみせます」

 ジョンズワートはぐっとカレンの父の手を握り、男同士でなにか通じ合っている様子だった。
 このジョンズワートが公爵様なのである。報告もなにもない。
 既に準備がしてあったようで、カレンとジョンズワートはその日のうちに正式に婚約。
 よっぽどのことがない限り、二人は結婚する運びとなった。
 同日に祝いの食事会も開かれて。
 ジョンズワートと別れるころには、外は暗くなっていた。
 彼がやってきたときは、柔らかな日差しが届いていたはずなのに。何もかもが、あっという間だった。

 一気に話が進んだために、どうにも実感がわかなかった。
 ジョンズワートに結婚を申し込まれたことも、それを受け入れてしまったことも。みんなが大喜びしたことも。全部全部、夢だったのではと思えてくるのだ。
 そんなカレンに現実であることを理解させたのは、チェストリーだった。
 ようやく解放されたカレンが、ふらふらと自室へ向かう。そこでカレンを待ち構えていたのがチェストリーだ。

「お嬢。婚約、おめでとうございます」
「チェストリー……」
< 28 / 210 >

この作品をシェア

pagetop