若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 約半年の婚約期間を経て、カレンとジョンズワートは結婚。
 名前もカレン・アーネスト・デュライトに変わった。
 そういう慣習であったため、式を挙げた日に初夜も済ませ。
 そのときのジョンズワートは、とても優しくて。愛されていると勘違いしそうになった。
 しかし、そういったことをしたのは初夜の一度きりで、結婚から数か月経った今でも、ジョンズワートは全くカレンを求めない。
 寝室も別れており、新婚のはずのカレンは一人で夜を過ごしている。
 社交の場に出た際、エスコートのために手や腰に触られることがあるぐらいだ。

 カレンは女だから、男性の欲のことはいまいちわからない。
 けれど、外に出れば色々な話が耳に入ってくる。
 いくら忙しいとはいえ、ジョンズワートのような若い男性が、一度きりで満足してそれ以上は求めてこないなんて、なにかがおかしいのだ。
 大抵の場合、そういうときは、妻とは別の人を愛していると……そう聞いたこともある。
 カレンは、「別の人」に心当たりがあった。
 
「奥様、お茶をお持ちしました」
「え、ええ。ありがとう、サラ」

 その心当たりとは――今はカレンの侍女を務めている彼女、サラ・ラルフラウだ。
 長い赤毛を綺麗にまとめ、てきぱきと働く頼もしい人である。
 サラはジョンズワートの妹の侍女だったはずだが、どうしてか、結婚後、カレン付きとなった。
 ジョンズワートは信頼できる人に妻を任せたいからだと言っていたが、なんだか、あてつけのようにも思えてくる。
 カレンとは仕方なく結婚しただけで、本当に愛しているのはサラなのだと。
 それをカレンにわからせるために、あえてカレンにサラをつけたのではないか。
 そんなひねくれた考えを持ってしまうぐらいには、ジョンズワートが自分に触れてこないことにショックを受けていたのだ。
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