若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
「サラ? どうしたの?」
「奥様。デュライト公爵家に嫁いでくださり、本当にありがとうございます」
「へ? ええと……」

 混乱するカレンをよそに、サラは深くお辞儀をし、感謝の意を表明する。
 ジョンズワートのカレンカレンカレンコールに悩まされた彼女の、心からの言葉だった。

「旦那様は、本当に、ずっとずっと、奥様のことを求めていらっしゃいましたから。奥様が来てくださって、ようやく落ち着いたんですよ、あの方」

 これも、本当のこと。
 けれど、結婚前のジョンズワートの様子など、カレンが知るはずもなく。
 ふふ、といたずらげに、笑顔でそんなことを言われても、カレンには真偽がわからなかった。
 結婚してすぐにサラが侍女となったから、二人の付き合いもそれなりとなる。

 たまにこういったやりとりをしているのだが、サラの思いはカレンには伝わらず。
 そこにカレンを下に見るような気持ちや、嘘はないと思えたが……。
 それだけ求めていたはずの自分に触れない旦那様、という状況だから、さらなる戸惑いを生んでいた。
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