若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
「あの、ジョンズワート様」
「うん? なんだい、カレン」
「欲しいものがあって、少し買い物に出たいのですが」
「わかったよ。いっておいで。護衛を手配するから、少し待っていてくれるかな」

 おずおずと外出を希望するカレンに、ジョンズワートは優しい笑みを返し、彼女の望みを快く受け入れた。

 今日、カレンの護衛についたのは、アーネスト家から連れてきたチェストリーと、ジョンズワートの右腕で親友のアーティだ。
 付き合いの長いチェストリーは言うまでもなく。
 アーティもカレンに対してとても好意的だから、カレンは楽しい時間を過ごすことができた。
 ついつい、ジョンズワートへのお土産のお菓子まで買ってしまって。
 それを渡せば、ジョンズワートは顏を綻ばせて「ありがとう」と言ってくれた。
 こういうときは、自分たちが仲のいい夫婦であるように思えた。
 こんなやりとりを何度か繰り返していた。だからか、つい。

「あの、もしよければ、なのですが」
「なんだい?」
「今度、一緒におでかけしませんか?」

 カレンが渡した小袋を、嬉しそうに眺める彼を見ていたら、こんな言葉が飛び出してしまった。
 だって、彼はちょっとしたお菓子をプレゼントしただけでこんなにも喜んでくれるのだ。
 今度は一緒に、と誘いたくなるのも無理はない。

 しかし、ジョンズワートは。

「え……?」

 そう言って、驚いた様子で青い瞳を開いた。
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