若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 そんなことを言われるとは、思っていなかった。そんな雰囲気だ。
 ジョンズワートの反応を見た瞬間、カレンは泣きたい気持ちになって。

「し、失礼しました!」

 あまりにもいたたまれなくて、彼の前から逃げ出してしまった。

「待って、カレン!」
「失礼します!」

 妻に向かって手を伸ばすジョンズワートと、素早く逃げるカレン。
 ジョンズワートの手がカレンに触れることはなかったが……。

「……一緒に行ったり、誘ったりしていいのかな」

 一人残されて。ジョンズワートは、そう呟いた。
 自分は彼女に嫌われていると思っていたから。
 外出のときぐらい、好きにさせてあげよう、自分から離れる時間を作ってあげようと思っていた。
 だから、一緒にどうかと誘われて、とても驚いた。ジョンズワートにしてみれば、まさかまさかのことだったからだ。
 でも、彼女が同行を望んでくれるのなら。

「デートコース、アーティに相談してみるか……」

 ジョンズワートの唇は、弧を描いていた。
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