若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 ジョンズワートにエスコートされながら馬車に乗りこみ、彼の隣に座ったカレンだが……。
 ずっと大好きだった妻とのデートにうっきうきのジョンズワートとは対照的に、「あれ???」と混乱していた。
 食事中だったあのときは、彼に触れられてふわふわして、なんだかとてもいい心地で。その状態で、彼の誘いを受け入れてしまったのだが……。
 少し時間が経った今、正気に戻ってしまったのである。

 初夜以降、なにもなかった自分たちが――デート、をする。
 ジョンズワートがデートと言ったのだから、これはデートなのだろう。
 
 デート。どうして急に、デート。
 自分が「一緒に出かけませんか」と言ったことがきっかけなのはわかっているのだが……。
 まさか、こんなことになるなんて。
 
 子供の頃に比べたらずっと丈夫になったとはいえ、カレンは、通常に比べれば今も身体が弱い。
 今、季節は冬。カレンにとっては、つらい時期である。
 ジョンズワートもそれを知っているからか、外の寒さにやられないよう、軽いのにとても温かい、上等な上着まで着せられている。
 
「カレン、大丈夫? 寒くはない?」
「は、はい。大丈夫です。ありがとうございます」

 心配したジョンズワートが、カレンの顔を覗き込んでくる。
 冬用の馬車だから元から距離が近いのに、更に近づかれてしまった。
 こんなことをされたら、寒いどころか、顔も身体も暑くなってしまう。
 あまりの近さに赤くなって俯くカレンを、にこにこのジョンズワートが見守っていた。
 夫婦となって数か月経つはずなのに、カレンは初心なままだ。
 これも、ジョンズワートが初夜以降、彼女に全く手を出さないからなのだが……。
 その手を出さない夫のジョンズワートは、上機嫌すぎて花でも飛びそうな勢いであった。
 彼の部下のアーティがこの場にいたら、でれでれすぎて気持ち悪いと言われてしまうことだろう。
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