若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
「まずは、食器を見にいこうか。せっかくなら、きみと揃いのものが欲しいな」
「お、お揃いなんて、そんな」
「……嫌かい?」
「…………嫌なわけでは」
「じゃあそうしよう」

 デートとかお揃いとか、急になんなんです!? とキャパオーバー真っ最中のカレンをよそに、ジョンズワートは御者に行先を指示する。
 主人の言葉を受け、馬車がゆっくりと動き出した。

 ホーネージュは、1年の半分ほどが冬の雪国だ。
 だから、馬車の作りも他の国とは異なる。
 冬には、小さめの作りの、そりをつけたものが使われるのだ。
 通常は車輪かそりのどちらかのみがついているが、公爵家の所有物なだけあって、簡単な操作でそりから車輪へ切り替え可能になっている。
 ちなみに、今はそりモードだ。
 デュライト家の周辺はよく道が整備されているため、馬で進むことも可能だが、もっと雪深い場所になると、犬ぞりが主流なこともある。

 出発した馬車――今はそりだから、馬ぞりと言った方が正しいのかもしれない――の中で、カレンはひたすら混乱していた。
 初夜以降、夜会でのエスコート等の最低限の触れ方しかしてこなかった人に、プライベートで背や手を触られて。
 デート、することになって。
 揃いの食器が欲しいとまで言われている。
 すごく優しいのに、自分を求めてくれない、外出への同行もほとんどなかった状態から、突然のこれである。
 混乱するのも当然というものだろう。
 わくわくのジョンズワートと、ぐるぐるのカレンのデートは、まだ始まったばかり。
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