若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 話した通り、最初は食器を取り扱う店に向かった。
 本当なら、ジョンズワートとしては湖畔や海辺の町にでも行きたかったところだが……今は冬。
 カレンのことも考えて、暖かい場所を行先に選んでいた。

 店に入った二人が最初に向かったのは、茶器が並ぶコーナーだ。
 店主が「どうぞお手にとってご覧ください」と言ってくれたから、ジョンズワートは気になるものを手に取り、じっくりと形や模様を確認する。

「カレン、きみも気になるものがあったら見てごらんよ」
「い、いえ。私はやめておきます」
「……そうかい?」

 カレンも紅茶は好きだから、茶器にも興味がある。
 けれど、突然の旦那様とのデートで動揺しきりの今、茶器なんて手に持ったら落として割ってしまいそうだった。
 だからお断りしたのだが……。カレンの返事に、ジョンズワートは少しだけ寂しそうな顔をした。
 でもすぐに気を取り直して、自分で持ったカップをカレンに見せてくれた。
 
「ほら、これなんてキレイだよ」

 ジョンズワートが見せたのは、白地に花があしらわれたティーカップ。
 カップの内側は、ほどよいバランスで緑と花が配置されており、カップを鮮やかに彩っている。
 ソーサーも同じように、白、緑、花、で構成されている。

「まあ……!」

 流石は幼い頃から彼女に片思いする男、といったところか。
 カレンの好みを的確に当ててきたものだから、彼女の表情もほころんだ。

「……緑はやっぱりいい色だよね」
「ええ! 私も、緑は大好きです」

 そう返したときには、だいぶ緊張がほぐれていた。
 緑色には人を癒す力があるという。そのおかげだろうか。
 ジョンズワートとしては、カレンの緑の瞳のことも褒めたつもりだったのだが……。
 それが伝わらなくとも、カレンが喜んでくれたからよしとした。
< 40 / 210 >

この作品をシェア

pagetop