若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 いくつかの店をまわったら、喫茶店で一休み。
 一言に喫茶店といっても、それなりの身分の者しか入れないような高級店だ。
 オープンスペースもあるが、希望すれば個室に通してもらえる。
 どうも、ジョンズワートがカレンに贈る菓子はここで購入することが多いようで。
 来店するとすぐに店主が出てきて、名乗ってもいないのにカレンたちを公爵夫妻として扱った。
 当然のように、カレンとジョンズワートは個室へ通される。
 二人に気を遣ったのか、同行していた護衛は部屋に入らず、扉の前に立つだけに留めた。
 その護衛というのは……チェストリーだったりする。今回は二人の馬車を操る御者も務めている。
 他の店にいたときも、彼はデュライト公爵夫妻に気を遣い、離れた位置で待機していた。

 普段はカレン、チェストリー、アーティの三人で外出することが多いから、チェストリーはカレンの話し相手にもなっていた。
 けれど、今回は。
 二人が距離を縮めるいい機会に、自分が出張って邪魔をするわけにはいかないと思い、なるべく彼らの視界に入らないよう動いていた。
 護衛として警戒はしているものの……正直なところを言えば、少し退屈だった。
 デュライト公爵夫妻とは最低限の会話しかせず、午後いっぱい連れ回されるのである。
 しかし、両想いのはずなのにどうしてか上手くいかない二人が、ようやくきっかけを掴んだのだ。
 黙って、離れて、静かについていくぐらい、この「デート」が持つ意味を考えれば、なんてことはなかった。


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