若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 扉の前で、チェストリーは小さくため息をつく。
 10代の頃のカレンとジョンズワートは、誰がどう見たって両想いだった。
 それが、どうしてか拗れてしまって、疎遠になって。
 チェストリーは、二人が離れてしまったことを残念に思っていた。
 カレンが結婚を考える年齢になった頃だって、チェストリーの目には、彼女はジョンズワートのことが忘れられず、数多舞い込む縁談を白紙にしていたように見えた。
 離れていた頃のジョンズワートがどう過ごしていたのかは、チェストリーにはわからなかったが。
 カレンに結婚を申し込んできたと知ったとき、ああ、あの人もお嬢と同じだったんだ、忘れられないままだったんだ、と感じた。
 
 二人の婚約期間中、カレンにこう言われたことがある。

「8年も経ったのにずっと私を好きだったなんて、無理がありますよね?」

 流石のチェストリーも、ずばずばと「いや貴女もそうでしょう」「ずっと心にジョンズワート様がいたじゃないですか」「それと同じでは?」とまでは言えず。

「何年も続く想いというものも、あると思いますよ。……俺も、そういう人を知っていますしね」

 と返すに留めた。
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