若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
「は、はひ……」

 幼い頃から好きだった彼のいたずらっ子みたいな表情に押され、半分こを了承。
 そのときのカレンの声は、裏返っていた。

 店員を呼び、ジョンズワートが注文をすれば、ほどなくしてタルトとパフェ、2つのティーポットとカップが運ばれてくる。
 タルトは普通に半分に切ってわけっこ。
 パフェは……やはり、1つの器を二人でつつくことになった。
 結婚して数か月のカレン。キスすら初夜にしか経験がない。

 あまりのことに顔を真っ赤にして、ひゃー! となりながらも、彼女が食べる速度は変わらず。パフェとタルトを食べ進めていく。
 カレンは甘党なのである。
 ずっとキャパオーバー状態である彼女は気が付いていなかったが、パフェの半分以上……3分の2ぐらいはカレンが食べた。
 甘いものが好きな彼女のために、ジョンズワートが譲った部分も確かにある。
 しかし、だ。甘いものが好きであっても、許容量は人によって違う。
 カレンとジョンズワートの場合、両者甘いものは好きだが、許容量はカレンの方が上だった。
 ジョンズワートは早い段階で生クリームにやられ、スプーンの動きが鈍くなってしまったのである。
 後半はもう、パフェを吸い込むカレンを見守っている状態だったが、いっぱいいっぱいのカレンはそれに気が付くことなく、美味しく完食した。
 ちなみに、カレンは仲睦まじいカップルのようにパフェをつつき、半分ずつ食べたと思っている。

 タルトとパフェを食べ終わり、二人でのんびりと紅茶を楽しみ始めた頃。
 カレンが、おずおずとジョンズワートに話しかけた。

「あの、ワート、様。今日は誘ってくださってありがとうございます。とても楽しいし、嬉しいです。……あと、美味しかったです」
「……!」

 ジョンズワートの青い瞳が、驚きに開かれた。
 彼女の発した言葉の全てが、ジョンズワートにとってとても重要だったが……。カレンは、今、自分のことを「ワート様」と呼んだ。
 ジョンズワートと親しい者にしか許されない、愛称呼び。
 怪我をさせたあの日から、封印されていた呼び方である。それを、カレン自ら。
 ジョンズワートはもう、嬉しくてたまらなくて。ついつい、身を乗り出してしまった。

「……カレン。また一緒に出かけよう!」
 
 ジョンズワートの勢いに、少しびくっとしたカレンであったが。
 すぐに笑顔を取り戻し、「はい」と、確かに頷いた。
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