若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 そのあともデートは続き、お腹の具合を考慮して、少し遅めのディナーへ。
 高級ホテルの上階にあるレストランで、こちらもやはり個室である。
 ドレスコードを考えると、今の二人の服装はその場にふさわしいとは言えなかったが……。
 公爵様とその奥様のお忍びデートかつ個室だったから、苦言を呈する者はいなかった。
 チェストリーは相変わらず個室前待機である。
 食事も休憩もとらずに護衛を続けていては質も落ちるから、一応、たまにアーティと交代して休んではいる。

 ジョンズワートとともに個室に入ったカレンは、窓から見える景色に瞳を輝かせる。
 一面の雪景色が月に照らされ、淡く光っているように見える。
 雪国特有の屋根がとんがった建物と、その窓から漏れる明かり。
 もうすっかり日が沈んでいるはずなのに、なんだか明るくもあって。
 幻想的な光景に、この国で生まれ育ったカレンも見入ってしまった。
 そんなカレンの隣で、ジョンズワートは、景色ではなく妻を見つめていた。

「ワート様、きれいですね!」
「うん。そうだね」

 カレンの「きれい」は景色に対するもので、ジョンズワートが言ったそれは、喜ぶカレンに対するもの。
 ジョンズワートはカレンばかり見ているが、景色に夢中の彼女は、夫の視線になんて気が付いていない。
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