若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 二人の「デート」から数日が経過した。
 ここのところ、カレンは笑顔を見せることが多かった。
 ジョンズワートと楽しい時間を過ごし、妻としても少し自信がついたからだ。
 あの日の最後、キスをしてもらえなかったことは、ちょっとだけ残念に思っていたが……。
 自分が酔っていたから、ジョンズワートは手を出すことをためらったのかもしれない、と受け止めていた。

 今まで、ジョンズワートがなにを考えているのかも、周囲の人々が言っていることの意味も、よくわからなかった。
 でも、先日のデートで彼との距離を縮めたことで、みなにもらった言葉を信じる気持ちも生まれていた。
 もしかしたら、自分は彼に愛されているのではないかと。
 チェストリーやサラが言う、ジョンズワートが自分を求めていたという話も本当なのではないかと。
 そう、思えるようになったのだ。

 今日もカレンは上機嫌に、公爵家2階の廊下を歩いていた。
 この場所からは、デュライト公爵邸の中庭がよく見える。
 やっぱりきれいだなあ、とカレンは足をとめ、晴々とした気持ちで庭を眺めた。
 しかし、庭に見慣れた人影を見つけた途端、どくん、と心臓が嫌な音をたてた。 

「ワート様と……。サラ?」

 なにかを話しながら、二人が庭に立っていたのである。
 デートを経て、少し自信がついたカレンであったが、サラとジョンズワートの仲に対する不安の全てが払拭されたわけではなく。
 二人が一緒にいるところを見ると、心がざわついてしまう。

「どうして、二人で」

 カレンがいる位置からは見えなかったが、他の者も近くに控えている。
 二人で逢瀬していた、なんて噂がたたないようにするためだ。
 カレンの目に、二人きりであるように見えてしまったのは、運が悪かったとしか言いようがない。
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