若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 自分に与えられた部屋で、一人ベッドに横たわる。
 恥ずかしくて、惨めで、悔しくて、悲しくて。涙がとまらない。
 あれだけ頑張っても、ジョンズワートに拒まれてしまったのだ。
 彼はきっと、カレンを抱くつもりはないのだろう。
 愛されているのかもしれないと、思ったのに。天国から地獄へ突き落されたような気分だ。
 カレンはジョンズワートの妻だ。だが、妻という立場にあるだけでもある。
 ジョンズワートが優しいから勘違いしそうにもなったが、やはり、彼の気持ちはサラにあるのかもしれない。
 最初の一回はどうしても逃れられないから、仕方なしにカレンを抱いただけ。
 
 ジョンズワートは優しい人だから。本命の女性がいても、カレンを大事に扱ってくれた。夫婦らしく、デートもしてくれた。次も行こうと言ってくれた。
 でも、カレンと身体の関係を持つことはしない。
 ジョンズワートなりの線引きなのだろうか。

 これは貴族の婚姻であるから、たとえ愛のない結婚であろうと、世継ぎは作る必要がある。
 カレンも伯爵家の娘だ。子供はいるが夫婦仲が冷え切っている家庭もあることぐらい、知っている。
 だから、普通に考えれば、本命が別にいたとしても、ジョンズワートはカレンを抱いて子を作るべきなのだ。
 彼だって公爵家の当主。それは承知しているはずだ。なのに、カレンに手を出すことはない。
 ジョンズワートは、本命の女性と、妻の自分の間で、苦しんでいるのかもしれない。
 
「ワートさま……」
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