若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 ジョンズワートに二度目の求婚をされたとき。
 カレンは、傷をつけた責任が理由でもいいから、彼と結婚したいと思ってしまった。
 想い人がいるとしても、彼が欲しいと思ってしまった。
 そして、自分の望みを叶えるために、彼の求婚を受け入れた。
 その結果が、これだ。
 カレンも苦しくてたまらないし、ジョンズワートのことも困らせてしまっている。

 カレンは、思う。 
 自分は、身を引くべきなのではと。
 彼に愛されているなんていう夢を見ず、彼の元を去るべきなのではと。
 もっと早くにそうした方が、お互い傷が浅く済んだ可能性だってある。
 そもそも、彼とサラのことを知っていたのだから、婚約などするべきではなかったのだ。
 このまま夜を共にせず、子を作らず。タイミングを見て、彼の元を去ろう。
 涙で枕を濡らしながら、カレンはそう決めた。

 それはジョンズワートを想っての決断であったが、自分のためでもあった。
 彼のそばは、こんなにも、苦しい。
 彼のことが好きだから。彼と一緒に過ごす時間がとても楽しかったから。
 だからこそ、求められない事実が、苦しくてたまらない。
 求めて欲しい、自分の身体に触れて欲しいと、彼の情欲を向けられたいと、願ってしまう。
 それが叶わない以上、もう、カレンの方が耐えられない。
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