若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
「あ……。最後に、きたのって」

 そうやって、子を作らないようにと考えてしまったからだろうか。
 カレンはあることに気が付いてしまった。
 結婚式を挙げ、ジョンズワートとの初夜を済ませたあとから、月のものがきていない。
 女性の身体はデリケートだ。環境が変わったり、ストレスがかかったりして、周期が乱れることは多々ある。
 カレンは今までもそういったことがあったから、きていないことに自分でも気が付いていなかった。
 サポートがあるとはいえ、公爵家の奥様になったばかりのカレンは忙しく、心労も多い。
 だから、月のもののことなんて、気にする余裕もなかったのだ。

 ジョンズワートと交わったのはただの1回のみだから、環境の変化による負荷で、周期が乱れたと考えるほうが自然だ。
 けれど、妊娠の可能性がゼロだとは言い切れない。
 医師に診てもらえばはっきりするのかもしれないが――そんなことをして、本当に妊娠していたら。
 当然、ジョンズワートにも知られてしまうだろう。
 
 妊娠か、周期の乱れか。
 どちらかは、まだわからない。
 でも、もし前者だったら。
 カレンは、この先もジョンズワートを縛り付けてしまう。
 昔に起きたことの責任を取るために、本当に好きな人ではなく、自分と結婚した、優しく責任感のある彼を。一生、自分に縛ってしまう。

「そんなの……いや……」

 このままだと、自分も彼も苦しみ続けることになってしまう。
 どうしたら、彼を自由にできるのだろう。カレン自身も、彼を縛った罪から逃れられるのだろうか。
 一人ぼっちの部屋で、ベッドに横たわって。カレンは、思考を巡らせた。
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