若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 妊娠の可能性に気が付いたカレン。
 これ以上ジョンズワートと自分を苦しませることのないよう、ある計画を立てた。
 誘拐と死亡を装って、彼の前から消えてしまおうと思ったのだ。
 
 ホーネージュ王国は雪国で、季節はちょうど、冬だった。
 伯爵家の生まれであるカレンは守られて生きてきたが、この国の冬には、雪に関連した事故で命を落とすものも少なくない。
 それを利用することにした。

「ワート様。アーネスト家の領地で行われる雪まつりに行きたいのですが……」
「ああ、あのお祭りか。僕らも一緒に行ったよね。日程は?」
「できれば、今日」

 夫に外出を申し出るカレンは、おずおずと、こんなときに申し訳ない、といった風を装う。
 この日、よくカレンの護衛につく者たちが出払っていることは確認済みだった。
 アーネスト伯爵領で行われる雪まつりについては、ジョンズワートもよく知っている。
 1週間ほどかけて開催される盛大なもので、デュライト公爵領で行われる祭よりも規模が大きく、歴史もある。アーネスト伯爵領の観光資源の1つにも数えられている。
 カレンが元気になった頃には、二人で見て回ったものだ。
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