若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
「チェスター。カレリアとショーンは元気にしてるか?」
「ああ。おかげさまで。ショーンがまだ幼いから、カレリアは大変そうだけどな」
「夫婦二人だもんなあ。なにかあったら、周りを頼れよ? うちの嫁も、カレリアのことは大好きだからさ。慣れない土地で二人じゃ大変だろうって、よく心配してるんだ」
「ありがとう。そうさせてもらうよ」
山に向かうチェストリーに声をかけてきたのは、この村で親しくしている青年だ。
チェスターとカレリアというのは、チェストリーとカレンの偽名。
ショーンは、カレンとジョンズワートの息子の名だ。
二人は偽装夫婦であったが、元より付き合いが長く仲もよかったため、周囲の人に関係を疑われることはなく。
仲のいい家族として扱われていた。
この国は、ホーネージュ王国とは全く違う環境で。
冬になってもさほど雪は降らず、どの季節であっても比較的穏やかな気候をしており、土壌も豊かだった。
海産物がよくとれたホーネージュとは違い、こちらでは農業や、山での狩りや採集が盛んだ。
チェストリーはこれまでに培った身体能力を活かして、山に入るようになった。
彼が受けてきた訓練は主に対人戦闘だったが、この村で山での動き方を指導してもらえたから、なんとか適応できた。
長かった金髪は、一思いに切り落とした。
伯爵家や公爵家にいたときのように手入れをするのは難しいし、山で動きまわることを考えると、邪魔だったのだ。
三人は、これからもこの村で暮らしていく。
ジョンズワートに、知られることさえなければ。
思うところはあったが、チェストリーにとっては、今のカレンの笑顔がなによりも大切だった。
恋愛感情ではないけれど、主人であるカレンの幸せは、チェストリーの幸せだ。
デュライト公爵家にいるときのカレンに元気がなかったことは、チェストリーにだってわかっている。
でも、今は。愛しい人の子を抱いて、従者である自分と暮らし、周りの人のサポートも受け。
子育てに悪戦苦闘しながらも、心からの笑顔を見せることもある。
カレンにとっては、デュライト公爵家にいた頃よりも、今のほうがよい環境なのだろう。
だからチェストリーは、偽の夫であり続ける。自分を救ってくれた、カレンのために。
ただ――「カレンのため」が違う形に変わっていく可能性は、ゼロではない。
彼は、なにが主人のためになるのか考えながら、暮らしていた。
「ああ。おかげさまで。ショーンがまだ幼いから、カレリアは大変そうだけどな」
「夫婦二人だもんなあ。なにかあったら、周りを頼れよ? うちの嫁も、カレリアのことは大好きだからさ。慣れない土地で二人じゃ大変だろうって、よく心配してるんだ」
「ありがとう。そうさせてもらうよ」
山に向かうチェストリーに声をかけてきたのは、この村で親しくしている青年だ。
チェスターとカレリアというのは、チェストリーとカレンの偽名。
ショーンは、カレンとジョンズワートの息子の名だ。
二人は偽装夫婦であったが、元より付き合いが長く仲もよかったため、周囲の人に関係を疑われることはなく。
仲のいい家族として扱われていた。
この国は、ホーネージュ王国とは全く違う環境で。
冬になってもさほど雪は降らず、どの季節であっても比較的穏やかな気候をしており、土壌も豊かだった。
海産物がよくとれたホーネージュとは違い、こちらでは農業や、山での狩りや採集が盛んだ。
チェストリーはこれまでに培った身体能力を活かして、山に入るようになった。
彼が受けてきた訓練は主に対人戦闘だったが、この村で山での動き方を指導してもらえたから、なんとか適応できた。
長かった金髪は、一思いに切り落とした。
伯爵家や公爵家にいたときのように手入れをするのは難しいし、山で動きまわることを考えると、邪魔だったのだ。
三人は、これからもこの村で暮らしていく。
ジョンズワートに、知られることさえなければ。
思うところはあったが、チェストリーにとっては、今のカレンの笑顔がなによりも大切だった。
恋愛感情ではないけれど、主人であるカレンの幸せは、チェストリーの幸せだ。
デュライト公爵家にいるときのカレンに元気がなかったことは、チェストリーにだってわかっている。
でも、今は。愛しい人の子を抱いて、従者である自分と暮らし、周りの人のサポートも受け。
子育てに悪戦苦闘しながらも、心からの笑顔を見せることもある。
カレンにとっては、デュライト公爵家にいた頃よりも、今のほうがよい環境なのだろう。
だからチェストリーは、偽の夫であり続ける。自分を救ってくれた、カレンのために。
ただ――「カレンのため」が違う形に変わっていく可能性は、ゼロではない。
彼は、なにが主人のためになるのか考えながら、暮らしていた。