若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 村人の話によると、カレンたちは村外れの丘に建つ、小さな家で暮らしているそうだ。
 家族仲は良好で、息子は3歳。
 その年齢が確かなら、カレンはジョンズワートの元からいなくなった頃、妊娠したことになる。
 旦那は、とびきりの美形で、金髪だという。
 ジョンズワートは、そんな男に心当たりがあった。カレンと共に姿を消した従者、チェストリーである。

「ワート。しっかり歩け。どういう結果であれ、やっと見つけたんだ。姿を見るぐらいはしておきたいだろ?」
「ああ……」

 ようやくカレンの無事を確認できるというのに、ジョンズワートの足取りは重い。
 ここまでの情報から、ある可能性に辿り着いてしまったのである。
 そもそも、カレンは誘拐などされていなかったのでは、と。

 ジョンズワートは、カレンとチェストリーの関係を主人と従者であると思い込んでいた。
 変態貴族に引き取られて玩具にされてもおかしくなかったチェストリーは、まだ幼かったカレンに人生を救われている。
 二人の仲のよさは知っていたが、そんな経緯だから、そこにあるのは恋愛感情ではなく忠義だと思っていたのだ。
 けれど、違ったのかもしれない。
 本当は、二人は恋仲で。カレンはチェストリーのことが好きだったから、縁談を断り続けていた。
 なのに、ジョンズワートが無理やりカレンを妻にした。
 苦しんだカレンは、誘拐されたふりをして、チェストリーとともにジョンズワートから逃げ出した。
 今のジョンズワートの頭の中にあるのは、そんな筋書きだ。
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