若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
「カレン。この子は……」
「……がいます」
「え?」
「違います。あなたの子ではありません!」

 ジョンズワートはまだ、「自分の子か」と聞いていない。
 なのに「あなたの子供ではない」と否定してしまった時点で、ジョンズワートの子であると自白してしまったようなものなのだが……。
 今のカレンに、それに気が付くほどの余裕はなく。

「もう、どうしたらいいの……」

 カレンの緑の瞳から、涙がこぼれ始める。
 ジョンズワートに再会して。ショーンのことも知られて。従者が情報を流していたことも知って。
 負担の大きい出来事が連続して起こって、カレンはもう限界だった。
 ショーンもつられて泣き始め、親子そろって涙を流す状態に。
 カレンがあまりにも苦しんでいたからか、男たちもなにも言えなくなってしまった。
 ジョンズワートが近くにいる限り、この親子が泣き止むことはないだろう。
 彼もそれを感じ取ったようで。

「カレン。僕は一度離れるよ。落ち着いた頃、また話してくれると嬉しい」

 そう言って、名残惜しそうにカレンたちから離れて行った。
 チェストリーはその場に残ろうとしたが、カレンに拒絶されてしまい。
 男二人は、その場を立ち去ることを余儀なくされた。


 
 このときは、カレンだけではなく、ジョンズワートもチェストリーもいっぱいっぱいだった。
 だから、自分たちに向けられた視線の中に、悪意が混ざっていることに気が付けなかった。
 これだけ騒げば、他の者たちにも話を聞かれてしまう。彼らの会話を聞いたのが善良な者だけだったら、まだよかっただろう。
 だが、世の中には色々な人間がいるもので。
 
「ジョンズワート……?」

 一人の男が、にやりと笑った。
 死亡説まで流れる妻を探し続ける、一途な愛妻家。ジョンズワート・デュライト公爵。
 彼の話を知る者は、このラントシャフトにもいる。
 男は、カレンこそがジョンズワートが探し続けた妻であることを理解した。
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