闇に咲いた優しさの花

不思議な転校生

雲母 鱗(きらら りん)です、よろしくお願いします」


彼が口を開きそういうと、一瞬で上がる黄色い悲鳴。

言ってしまえば、少しうるさいが...仕方がないかもしれない。


だってーーーすごく、すごく綺麗(きれい)な子だったから。

真っ黒で(つや)のある黒髪。とても長くて、目も半分(かく)れていた。

対照的に彼の肌は真っ白で、まるで日の光を浴びたことがないよう。

ただ、私たちが一番(おどろ)いたのはおそらくそこじゃなくて。


彼の目は、赤く妖艶に、きれいに光っていた。

ーーーハーフ?それとも…

私はゾクッとした。

教室のみんなのハートになった目も、がやがやした音も、全て。



無音と化した。


背中の上を、二匹の毛虫が走る。

なぜゾクッとしたかというと、この町には昔からの言い伝えがあるから。

その言い伝えには、まぁ、現代訳するとつまりこうある。


『忌み嫌われた(あやかし)の一族の目を見てはいけないーーー

その目は紅玉(こうぎょく)のように光っている。

それは一族が()った人間の血であり、見たら最後。

喰われた人間の怨念(おんねん)()りつかれ、逃げることもできずに喰われてしまう』


ーーーーその子の目はまるでルビーのように光っていた。

言い伝えのように。



でも、彼の目を見ていても何も起きなかった。


思い違い、だったのかな。確かにハーフなら、ありえなくもないと思うけど。

「ねぇ」

私は(となり)の席の子に話しかける。

「ヒッ‼な、何でございましょう⁈」


真っ青になりながら、しどろもどろに答えるその子。

名前なんだっけ。ってか、そこまでビビらなくてもいいだろうに。

「あぁ、あの子ってハーフなのかな?」

転校生を指さしながら、私は言う。


いつの間にかSHRも終わって、その子は私の前の空いていた席に座っていた。

めんどくさそう…よりによってそことか、ありえちゃダメでしょ。


私は視線を戻す。

女の子は私の顔を見ないようにだろうか、下を向きながら答えた。


「いえ…アルビノらしいですよ。人の外見についてとやかく言うのはイヤなんですが…綺麗ですね…」

少し笑いながらそう言うその子。自分の外見に自信がないのだろう。

こうやって、自信がない人間が、私は嫌いだ。


自分の昔を思い出すから。

「そう。ありがとう」

私は会話をやめると、じっと転校生を見つめる。



ーーー言っておくと、私は馬鹿ではない。

アルビノ、つまり白子症は、17000人に一人の難病だ。

これは眼皮膚(がんひふ)白子症と(がん)白子症の2つに分かれる。


そのうち髪のメラニン色素に影響が出ないのは、眼白子症。



ーーー眼白子症の目の色は、茶色のはず。


つまり、あの子はウソを付いたのだ。


ーーーやるじゃない。

私はボソッと口に出す。


なんで私がこんなことを知ってるかって?

私はそっと、自らの右耳を触る。


私の右耳は、穴がなく奇形だった…。
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