あのメガネアイドルは…。

自分には


袋の中から一本の手持ち花火を取り出した真白。


そんな真白を見て、同じようにしゃがむ羽村。

羽村は花火を持つ真白の手を掴んで、ライターでその花火に火をつける。



綺麗とかそんな言葉はここにはない。

ただ花火が放つ音と、遠くにいる生徒の声が響いてくるだけ。



昼間の花火というのは白く光を放っていて、夜のような輝きは見えにくい。


しかし、周りの環境などはどうだって良い。
自分はどこであろうと光を放つ。


その花火に自分を重ねた真白。


自分にはできないことをこの花火はのうのうと…。



しゃがみ込んだまま、その火が消えるまでずっと見ていた。

羽村の存在も忘れていたに等しかった。



消えた花火を水が入ったバケツに入れた。


その時に、扉の向こうに人影を感じた。


それは羽村も同じだったよう。

真白は立ち上がり、羽村は手にしていた終わった花火をバケツに投げ入れライターをブレザーのポケットにしまった。

これらはすべて一瞬の出来事で、2人は同時に扉の方へ目を向けた。
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