妹の身代わりで嫁いだ姫は、ヤンデレなはずの皇王にとろ甘に溺愛される(旧 ヤンデレ皇王のつがいはデレ改革をお望みです ~加虐系ヤンデレはデレデレにデレチェンジ~)

21.弱み


 薄暗い廊下を進んでいたシルディアは目の前に灯る明かりに、心の底から安堵した。
 それは砂漠に突如現れたオアシスのようだ。

(ちょっと待って。どうして火が点いているの? 地下は滅多に使われることなんてないのに)

 違和感を覚えたシルディアが歩みを止める。
 すると、当然のように階段を降りてきた灰色のローブの男が残念そうに呟いた。

「まったく。何も考えずに上ってくればよかったものを」
「わたしに階段を上らせたかったら明かりを灯したのは愚策だったわね」

 男が階段を一段降りる度、じりじりとシルディアは後退る。
 まだ手首の拘束が解かれていないのだ。

(引き返したところで勝機はない。むしろ襲撃者を合流させてしまう方が厄介よ)
「嫌ですね。その目。反撃の糸口はないかと探る目です」
「……あなた達の目的は何なの?」
「時間稼ぎですか。いいでしょう。乗ってあげますよ」

 男はそう言いながら目深に被っていたフードを脱ぐ。
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