スイート×トキシック
予想だにしない内容に、どきりとして勢いよく顔を上げる。
疑問形ではあるものの、既に確信しているようだ。
誤魔化せない反応をしてしまったし、正直に認めるしかない。
「……バレたかぁ。ちゃんと元通りにしたつもりだったのにな」
肩をすくめて苦く笑う。
確かに俺は、気を失った相手を運ぶのに颯真の車を借りていた。
まさかそんな用途だとは思いもしないだろうけれど。
彼は咎めるように眉を寄せる。
「おい、分かってるのか? 無免許なんだし事故でも起こしたら────」
「分かってるって。ごめんごめん」
言わんとすることは承知している。
俺を心配してくれていることも。
だけど、だからってやめるわけにはいかない。
颯真はため息をつくと、てのひらを差し出してきた。
「スペアキー返せ」
……それもバレていたのか。
でも、返すことはできない。車をスムーズに使えなくなったら困る。
「あー……ごめん、なくした」
「はぁ?」
「ごめん! 本当にごめんなさい」
合理的に納得させられないなら、感情に訴えるしかない。
俺は眉を下げて両手を合わせた。
きっと許してくれる。
颯真は俺に甘いから。
「一生懸命探すから! あ、手紙のこともちゃんと調べてるよ」
だめ押しでそう続ければ、颯真ははっとしたような顔をした。
「その件なんだが……」
今度は封筒に手紙ではなく写真が入れられていたことを打ち明けられる。
「盗撮? ……それってもうストーカーじゃない?」
返した声色は非難気味になった。
もちろん、その対象は送り主だ。
「いっそのこと警察に……」
「ちょっと待って。それは得策じゃないと思うなぁ」
慌てて制すると、颯真が怪訝な顔をする。
「何でだ?」
「だって、そんなことしたら逃げられちゃうよ」
俺がどうにかしなきゃいけないんだ。
送り主の正体もほぼほぼ見当がついている。
あとは設置した小型カメラの映像を確認すれば確定させられるのに、ここでみすみす逃すわけにはいかない。
「ストーカーさんだってそんなんで引き下がるほど単純じゃないだろうし、そしたら今度は直接アプローチしてくるかもよ」
「え?」
「逆上して逆恨みとかされたら、よっぽどめんどくさいと思わない?」
警察の介入を避けたい、という意図もあった。
俺のしていることがふいに明るみに出るかもしれないし、警察とはなるべく関わり合いになりたくない。