スイート×トキシック



 その日から、情報収集と颯真を守るという目的のもと、俺は彼女をマークするようになった。

 放課後、教室のある3階廊下の窓から中庭を見下ろす。
 芽依が出ていったのが分かったからだ。

(何するんだろ)

 隠れるみたいにして木の傍らに立っている。
 こちら側からは丸見えだけれど。

 視線の先にあるのは、職員室前の廊下だろうか。
 窓越しに颯真の姿が見えた。

(え、まさか……)

 取り出したスマホを一瞬だけ器用に構える。
 すぐにしまい、満足したように校舎内へ戻っていった。

(へぇ、ああやって撮ってたんだ)

 かなり手馴れているように見える。

 あのスマホ、いますぐ叩き割ってやりたい。
 そんな衝動をこらえつつ、彼女を追って俺も移動した。

 ────職員玄関の前で柱の影に隠れる。
 芽依の姿はやっぱりそこにあった。

 きょろきょろと周囲を見回してから颯真のシューズロッカーを開け、何かを入れる。
 その一連の動作に迷いはなかった。

 見つかることを避けたいらしく、そそくさと退散していく。

(今日はどんなプレゼントかな)

 人目を(はばか)りつつ、俺も颯真のシューズロッカーを開ける。
 入っていたものを見てはっとした。

 綺麗にラッピングされた手作りのお菓子。

『もらってくれたら嬉しいな。口に合うといいんだけど……』

 いつかの芽依の言葉が頭の中に響いて、一瞬固まってしまった。

 遠くから聞こえてきた誰かの話し声で我に返り、ブラウニーを引っ掴む。
 その下にあった封筒も一緒に回収して帰路についた。

 道中、封を破って中身を見てみる。

 また手紙か写真だろうと思っていたけれど、そこには予想を大きく裏切るものが入っていた。

「爪……?」

 三日月型の細々(こまごま)とした白い破片の数々。
 ぞっと背筋が寒くなる。

(……まさか)

 ラッピングのリボンをほどいてブラウニーを取り出した。
 割ってみると、中には幾本もの髪が絡んでいる。

 とっさに口元を押さえた。
 俺にくれたものはこんなふうじゃなくて、普通だったのに。

(颯真のこと、好きなんだよね……?)

 何でこんなに気味の悪いことをするんだろう。

 異常だと言わざるを得ず、ひとまず颯真が見る前に回収できてよかったと息をつく。

 理解はできないけれど、一途ではあるのだろうと分かる。
 粘り強いというか、すごい執着だ。執念が深すぎる。

 ぐしゃ、と封筒を握り潰す。
 ブラウニーは公園のゴミ箱に捨てた。
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