聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
「今度は指輪の力を借りる。指輪を通して俺の魔力を使うんだ。通常、そんなことはできない。俺の魔力と指輪の力のおかげだ」
「へええ」
 なんか恩着せがましい、と三千花は思う。

 アルウィードは三千花を後ろから抱いた。
「ちょっと!」
 三千花の抗議を受け付けず、アルウィードは彼女の左手をとる。

「意識を指輪のほうに向けつつ、やりたいことを念じるんだ。何も言わずにやるのは初心者には難しいだろう。掛け声をかけてやるといい。水よ舞え、とか」

 耳元で囁かれる。
 背中に彼の体温を感じる。
 慣れたはずの抱擁が、急に特別に感じられた。
 心臓だけが走り出したかのように脈打つ。
 こんな状況で集中できるわけないじゃん。

「かめはめはー!」
 三千花はヤケクソな掛け声とともに両腕を突き出した。風がぶわあっと舞った。水の表面が波立つ。
 なんか想像と違うけど、一応は魔法ができたようだ。

「すごい、なんかできた!」
「水じゃなかったが、まあいいだろう。ところでかめはめはってなんだ?」
「気にしないで」
 聞かれて、なんだか急に恥ずかしくなった。
「もう一度水をやってみろ」

 言われて、バケツに手を向ける。
「えーっと……水!」
 何も思いつかず、そのまま言う。風は起きず、ただバケツの水が揺れた。

「本当にこれ、私が?」
 アルウィードを見ると、彼は優しく笑ってうなずいた。

「両手を合わせて、水を出してみて」
 アルウィードに言われて両手を器のように合わせてみる。

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