聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
 それからしばらくは、炎を出したり、木を風で揺らしたり、地面に穴をあけてみたり、それを埋めてみたりして遊んだ。

「魔法の火って、やっぱり燃えるの? ほかに燃え移ったりとか」
「そうだ」

「扱いに気をつけないと火事になるね」
「三千花は飲み込みが早いな」
 アルウィードはにこやかに()める。そんなことで褒められて、三千花は恥ずかしくなる。

 その後も、何をやっても彼はニコニコして見ていた。
 だんだん保護者じみてきた、と三千花は思う。

 ふと、リグロットが懐に手を入れるのが見えた。取り出したのは懐中時計。
「懐中時計なんてあるんだ、この世界」

「とことん人の世界を下に見てるな。なんだと思ってるんだ」
 アルウィードはあきれたように言った。
「いやだって、知らないから」
 三千花はぼそぼそと言い訳する。

「そろそろお時間でございます」
 リグロットが苦笑しながら言う。
「え、もう?」
 三千花は思わず声を上げた。

「俺と離れるのが寂しいか?」
「違うし。魔法を使いたいだけだし」

「リグロット。しばらく三千花に付き合ってやってくれるか」
「よろしいので? 本来、魔力を他人に使わせるのは――」
「大丈夫だ。これくらいではなんともない」
 答えてから、アルウィードは三千花を抱きしめる。

「俺がいないときも練習していいが、やりすぎるなよ」
「はーい」
 三千花の返事は軽かった。

 初めての魔法にわくわくして、もっと試してみたかった。それがどういう結果になるのかわかっていなかった。

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