聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
 馬車は思ったより揺れなかった。リグロットによると、魔石で揺れを軽減しているのだという。

 車より視点が高かったため、景色は良く見えた。
 城門を出ると、街はすぐだった。

 馬車の窓から見える町並みは非常に整っていた。
 石畳の道路の両側に、白い壁の家々。屋根は赤茶で統一されていた。
 行き交う人々は活気にあふれているように見えた。

 子供が三千花たちの乗る馬車に手を振ってはしゃぐ。母親がそれをあたたかく見守る。
 三千花は(あわ)てて手を振り返した。子供が喜んでさらに手を振るのを見て、なんとなく笑顔になる。

「三千花ちゃんは第二王子様のお気に入りなんだって?」
 晴湖が突然聞いてきた。

「ち、違います」
 言われて、三千花は慌てて否定した。

「顔真っ赤だけど」
 三千花は頬に両手を当てる。リグロットが声もなく笑った。

「アルウィード様と三千花様はご婚約が内々定しておられます」
「まあ、おめでとう」
「だから、違うんですって」

「第一王子は婚約者がいるんでしょ、第二王子は三千花ちゃんでしょ、あとは?」
「王族で婚約者や配偶者のない独身男性といいますと、第三王子のエルンレッド殿下、第四王子のリーンウィック殿下、従兄弟であられるユレンディール殿下。成人しておられるのはユレンディール殿下だけですね」

「じゃあ、ユレンディールさん、狙っちゃおうかな」
「よろしいかと思います」
 笑いを含んでリグロットが言う。

「いいんだ、それ……」
 三千花は半ばあきれてつぶやく。
「あら、信じるの?」
 晴湖がからかうように言う。

「あ、ジョーク……」
「やあね、三千花ちゃんたら、純粋ー!」
 リグロットがクスクス笑う。
 自分だけ真に受けていたなんて恥ずかしい。
 三千花はさらに顔を赤くしてうつむいた。


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