聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜





 翌朝、アルウィードは青白い顔で朝食に現れた。
 午前中に蓮月を送ると言われ、三千花は立ち会いを要求した。本当に送り返すのか、不安だった。

「そんなに信用がないのか」
 アルウィードは不満そうだったが、結局は許可してくれた。

 儀式が始まる前にエミュリーに神殿に連れて行かれる。
 三千花は入り口で立ちすくんだ。護衛の兵士も一緒に立ち止まる。

 一昨日は夜中に忍び込み、薄暗い中でファリエルタに会った。
 その後、襲撃された。
 目の前で襲われている人がいるのに、三千花は何もできなかった。

「ご気分がお悪いのでしたら……」
 エミュリーが言う。
「行くわ」
 三千花はギュッと拳を握りしめた。

 エミュリーが入口の兵士に三千花の来訪を告げて中に入る。
 陽光が差し込む神殿は、あのときとはまったく別の建物に見えた。

 あの夜の痕跡(こんせき)は消し去られている。
 祭壇にはこの国の神の像が(まつ)られ、厳かに皆を見下ろしている。

 あれは夢だったのか。
 夢であってほしい。
 誰も死んでいないのだと言ってほしい。
 三千花は心のなかで祈った。

 そのまま神殿で待機していると、アルウィードとリグロットが蓮月を連れてきた。

 蓮月は縄で縛られ、一晩を過ごしただけとは思えないほどやつれていた。
「何したの?」
「何も」
 アルウィードは平然と答える。


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