聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
 三千花は縄を見て顔をしかめる。
「すぐほどいてあげて。犯罪者でもないのに」
「申し訳ありません、牢から出すときに暴れたので」
 リグロットが言う。

 自分との扱いの差に、三千花は驚く。
「勝手に連れてきて牢に入れるなんて!」

「連れてきた覚えはない」
 アルウィードは冷たく言い放つ。

「刑事さん、大丈夫ですか? ここはあちらとは違う世界なんです。でももう帰れますから」
 蓮月は返事をしなかった。

 アルウィードは三千花の腰を後ろから抱いた。
「何!?」
「便乗してあちらに行こうとしないように」
「しないよ」
 三千花はもがくが、アルウィードはガッチリ抱いていて離れない。

「……始めます」
 二人の行動に半ばあきれながら、リグロットは言った。

 魔法陣の中に彼を立たせ、縄をほどく。神官が呪文を唱える。
 青い光が伸びて、蓮月を包んだ。
 光が収まったときにはもう蓮月の姿はなかった。

「本当に帰ったの? 帰らせたフリじゃなくて?」
 急に心配になって、三千花は聞いた。

「そんな面倒なことをするくらいなら始末する」
 うんざりした様子で、アルウィードは言う。

「始末って、殺すってことでしょ」
 さらっと言ってのける彼に、三千花はゾッとした。

「離して! あなたのこと見そこなった!」
「落ち着いてください、アルウィード様はそんなことしません。実際にきちんと帰らせたじゃないですか」
 リグロットが言う。

「信じられない! 何をどうやって信じたら良いの!」
 アルウィードは三千花を自分の方へ向き直らせた。

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