聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
結局、リグロットから散歩の許可は下りなかった。
三千花の部屋でお茶会をすることは許された。
晴湖が手配し、エミュリーも部屋に下がり、二人だけのお茶会になった。
「人がいたら言えないことがあるんじゃない? 私でよかったら聞くよ?」
「ありがとうございます。でも、いいんです」
「――そうよね。いきなりじゃ言えないわよね」
「すみません」
「謝ることないわよ。あなたいい人なのね」
言われて、三千花の中にあふれるものがあった。
それは瞳からこぼれて、彼女の頬を濡らす。
「大丈夫? ……じゃないわね」
「すみません、私……」
「無理しなくていいわよ。つらかったのよね」
三千花は自信なさそうにうなずく。
「私、つらいって言ってもいいですよね?」
刑事の扱いを見て、自分がいかに厚遇されていたかを知った。聖母と呼ばれ人をつけられ、豪華な部屋に豪華な食事。丁寧に遇されている。だがそれでも、つらさや恐怖をなかったことにはできない。
「いいのよ。つらさって人それぞれじゃないの」
晴湖が言うと、三千花は黙ってうなずいた。
三千花は今までのことを話した。
誘拐同然で連れてこられたこと、令嬢が異世界へ戻るよう手配してくれたこと、その際に襲撃されて令嬢も神官たちも殺されたこと。向こうの世界で仕事を失ったこと。
自分の行動で他人の人生を歪めてしまったかもしれない恐怖。
これからの行動で他人の人生が歪むかもしれない恐怖。
自分は人生を歪められたというのに。