聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
 またある時は、散歩中に見かけたドーベルマンについて話をした。
 その犬は警備兵に連れられて耳をピンと立てて歩いていた。

「ここにもドーベルマンがいるのね」
 晴湖がリグロットに話しかけると、彼は「あちらにもいるのですね」と返した。

「ねえ、ドーベルマンって、耳と尻尾を切ってピンとさせてるって知ってる?」
「そうなんですか?」
 三千花は驚いて聞き返す。立った耳はそういう種類なのだと思っていた。

「警察犬とか軍用犬として使われることが多いから、弱点となる耳と尻尾を切ったらしいのよ。耳が立ってたほうが聞こえがよくなるし。もとは垂れた耳でかわいいのよ」
「人間の都合で……」

「痛みに鈍感な時期に切るから負担は少ないらしいのだけど。耳を切ったほうが外耳炎を防ぎやすくなるし、メリットはあるみたい。何が正解かはわからないけど。人間でも予防的に臓器を摘出することあるから」
「そうですね」
 世界的な女優がガンの予防的手術をして話題になったのを思い出した。

 そもそも軍用犬に利用するのも人間の都合だし、あちらでもいろいろと議論されていることだ。
 なんとなくリグロットを見ると、彼は少し慌てたように言う。

「こちらのドーベルマンは切ってません。品種改良で今の姿です」
 それを聞いてなんだか三千花はホッとした。
 凛々(りり)しい姿で歩いている犬は、どこか誇らしげに見えた。


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