聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
散歩のときにはたいてい四阿でお茶をした。
それは庭のところどころにあり、テーブルと椅子が備え付けられていた。
この日に寄ったのは、芝生に囲まれた白い四阿だった。八本の柱で、半円を被せたような天井だ。
そこで晴湖がティーセットを広げた。リグロットが魔法沸かしてくれたお湯でお茶を入れる。
「魔法って便利よね。コンロがなくてもお湯がわかせるんだもの」
「貴族はそういう使い方をしません。庶民のやることです」
リグロットは不服そうだった。
「私、庶民だからバッチリ」
晴湖は彼の嫌味をものともしない。
「外で食べるお菓子って美味しいわよね」
晴湖の勧めで三千花はクッキーをかじった。久しぶりに美味しいと思った。
「リグロットさんもご一緒に」
「けっこうです」
「そっか。護衛の人は勤務中は飲食できないんだっけ」
晴湖が言う。なんでそんなこと知ってるんだろう、と三千花は驚いた。
「歩いたあとのおやつはいいわー。また明日も散歩しましょうね」
晴湖はにっこり笑った。
どうして明るくいられるのだろう。
気にはなったが、聞けずにいた。
最初に会ったとき、彼女は容姿が原因で辛い思いをして、それを乗り越えてきたと言った。その経験が彼女を強くしたのだろう、と思った。
三千花は晴湖のおかげで暗澹から抜け出しつつある自分に気がついてはいた。
それが死者への冒涜のように思えて心は空転を続けていた。
だが、これだけ心配をかけているのに元気にならないというのもまた他者の善意を踏みにじるようで、どうしたらいいのかわからない。
第一王子と会ったのはそんな日が続いたあとのことだった。