聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
残されたエルンレッドは三千花に謝った。
「ごめんなさい、リーンが……」
「こちらこそごめんなさい、失言でした」
よく知りもしないのに、思ったことをそのまま言ってしまった。
「あなたに悪気がないのはわかってます。だからきっと大丈夫です」
エルンレッドが言う。年下に慰められた、と三千花は自分にがっかりした。
「魔力がないと低く見られがちなんですが、特にレオ兄様からの態度がひどいんです。だから今日は荒れてて。いつも婚約者のロレッティア様までリーンにはひどい態度で」
エルンレッドは悲しみを顔に浮かべた。
「ロレッティア様は軍人の家系でプライドが高いし、魔力の強い人だから。火魔法が得意で、ほかにも魔法をいろいろ使えて」
「魔力が強いといろいろ使えるの?」
彼の伏せられた目は、憂いを濃くする。
「いろんな種類が使えても魔力の少ない人もいます。そういう場合は全体的に威力が弱いです。でも、国内の貴族では一種類しか使えない人を馬鹿にする傾向があるんです。どうせ日常では使わないのに」
「使わないなんてもったいない気がする」
「生活のために使うのは貴族のやることじゃないっていう風潮があって。使用人にやらせるんです。なのに、魔力の大きい小さいで競ってるんです」
エルンレッドはため息をつく。
「この世界で魔力がないっていうのは大きなことなんです」
「私は魔力がないからよくわからないけど……そうね、差別は向こうの世界にもあったから」
「そうなんですか。全員の魔力がなくても……。そういえば、アル兄様も昔はレオ兄様にいじめられていたって言っていたことがありました」
「そうなんだ?」
「魔力の弱い人をいじめるのは良くないけどアル兄様なら魔力が強いからいいんだ、とか言ってました。僕にはよくわからない理屈です」
弱々しくエルンレッドは笑った。