聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
「だから兄弟仲は良くないんです。僕はアル兄様のこと好きだけど、リーンはコンプレックスから反発していて、ユレンとの――ユレンディールとのほうが仲がいいくらいなんです」
「へえ……」
 三千花はふと気がつく。

「もしかして、第一王子様だったら異世界への転移もできたりする?」
「できると思いますけど、頼まないほうがいいです。どんな代償を要求されるかわからないから」

 確かにあの人なら何を言い出すかわからない、と三千花は思う。さらに婚約者のロレッティアに知られたらどんなに恨まれるか。いや、三千花が邪魔者なら協力してくれるのだろうか。

 だが、協力したファリエルタは殺された。また誰か殺されるかもしれないし、今度は自分も殺されるかもしれないし、アルウィードに連れ戻されたあとも大騒動だった。いくら帰れても彼が来たら元の木阿弥(もくあみ)だ。

 三千花は陰鬱(いんうつ)な気持ちになった。そんな彼女の様子には気が付かず、エルンレッドは続ける。

「レオ兄様ができないのは治癒魔法くらいじゃないのかな。本人は明言してないけど」
 それ以外はなんでもできるなら、万能と言えるのではないのか。三千花はなんだか怖くなった。

「僕は王族としては並の力かな。優れてはいないけど劣ってもいない。でも治癒魔法の精度は高くて、これなら戦場でも重宝されます」
「……戦争があるの?」

「ここ百年くらいはないですよ。でも国として軍備は大事だから」
 こんな少年でもそこまで考えているのか、と三千花は切なくなった。

「僕ももう少ししたら軍に参加するんです。王族の義務なんですよ。軍の経験なしに人の上には立てないって」
 悲しそうにエルンレッドは言う。

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