聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
「アル兄様と会ったのは最近なの?」
 急に話題が変わったので、三千花は一瞬、戸惑った。
「最近よ」

「アル兄様は前から知ってるみたいでしたよ。やっと会えた、と僕には言ってました」
「知らないわ」

「子供の頃によく異世界へ遊びにいって怒られたって聞いたことあるけど」
「そんな頃には会ってないなあ」
 あんな特徴的な瞳を覚えていないわけがないと思う。

「アル兄様が女性にこんなに執着するのは初めて見るから。いつも縁談は断るばかりで」
「そうなんだ」

 執着、という言葉に三千花は胸をえぐられた。甘い感情ではなく、聖母の必要性への執着。

 だからこそ彼は三千花の帰りたいという思いを無視して平気でいられるのだろうか。

 だが、それならあのときの言葉はなんだったのか。

 俺が君の世界に行けば良いのか、という言葉は。

 彼は何を考え、思っているのだろう。

「でも私は聖母じゃないし、間違いだってわかったら向こうへ帰ることになるから」
 自分の言葉が胸にチクリと刺さる。

「アル兄様、あなたが来てからうれしそうだったのに」
 エルンレッドが残念そうに言う。

「それも……きっと勘違いだから」
 言いながら、三千花は胸の痛みが広がるのを感じた。

 なんで胸が痛いの。
 自問自答する。
 答えはすぐそこにある気がした。
 だが、三千花はそれを見ようとはしなかった。

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