聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
* * *
ユレンディールが去ったあと、三千花はアルウィードがあれでも手加減していたことに気づいた。
ユレンディールは力が強く、抵抗はまったくの無駄だった。
アルウィードだって、力がある。
その気になれば、いつだって三千花を征服することができただろう。
だが、そうしなかった。
いつも強引に唇を奪うが、それ以上はしてこなかった。彼なりの葛藤と妥協を見たようで、笑いが込み上げてくる。
衝動に逆らわず、彼女は声をあげて笑った。笑っているのに、涙は止まらない。
ひとしきり笑うと、彼女の中に一つの名前が浮かんだ。
「アルウィード」
初めてその名を呼んだ。
瞬間、涙がさらにあふれて止まらなくなった。急なおかしさの次には急な悲しみ。自分がおかしくなったのではないかと思いながら、三千花はわんわん泣いた。
ユレンディールに愛していると言われたとき、違う、と三千花は思った。
彼女が言われたかったのは、彼からではない。
なぜかアルウィードの優しい笑顔が浮かんだ。
無性に会いたくなった。
なぜいまここにいないの。
いつもは呼ばなくても来るのに。
どうして。
三千花の涙は止まらなかった。