聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜


 * * *


 憂鬱な会議に参加したエルンレッドは呆然とした。
 リーンウィックがやたらめったら怪我をするようになったと思ったら、今度はユレンディールだ。

 きれいな顔の左頬が紫色に腫れ上がっていた。
 慌てて治そうとしたら拒否された。

 その上、アルウィードとユレンディールは目を合わせようとしない。
 もともと仲はよかったのに、どういうことだろう。

 聖母が来てからだ。
 エルンレッドの胸が痛む。

 聖母が来てからおかしくなった。
 あの人がいなければよかったのに。
 エルンレッドは悲しい気持ちで三千花を恨む。
 彼の心模様など関係なく、会議は始められた。


 * * *


 リグロットが三千花の元を訪れたのは、翌日のことだった。
 彼はシェリナから博物館への誘いが来ている、と言った。

「先日は申し訳なかった、仲直りの機会がほしいと言っているそうですよ」
 彼の言葉は三千花の予想外だった。では、あの剣幕で怒っていたのは、異世界に来て混乱していたゆえなのだろうか。

「神殿から聖母同士仲良くするようにと言われていますが、嫌なら断っていいのですよ」
 めんどくさそうに、むしろ断ってほしそうに、リグロットは言った。

「――行く」
 三千花の答えに彼は眉を上げた。何かを言いかけて、口を閉じる。

「脱走はしないから」
 三千花は自分からそう言った。

「――では、手配いたします」
 リグロットは軽くお辞儀をして、三千花の部屋を退出した。
 
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