聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
* * *
投げ出されたような衝撃を体に受けて、三千花は意識を取り戻した。
自失と覚醒のはざまでぼんやりしていると、男たちの話し声が聞こえた。
「――って、一級貴族だろ」
「それがリ――と密談?」
「大神官長――」
「――嫁の実家だっけか」
切れ切れに聞こえる会話。
大神官長? ユレンディールさんのお父さんがそうだったような。
朦朧とした頭で、そう思う。
「どうしてこの女を殺そうとするんだ?」
「知らねーよ。貴族お得意のお家騒動か権力争いだろ。俺たち底辺は金さえもらえればいいんだ」
男たちの会話は途切れ、扉が閉まる音がした。
ああ、監禁されたんだ。
だんだん意識がはっきりしてきた。
どうやら自分は縛られて倒れているようだった。目隠しもさるぐつわもされている。
リグロットや護衛の兵士たちはどうなったのか。たくさんの血が流れていた。
どうか無事でいて。
三千花はままならぬ姿勢で祈る。
とにかくまずは状況を確認しなくては。
三千花は起き上がろうとしたが、うまく体が動かせない。
やっとのことでなんとか半身を起こすと、目隠しがはらりと落ちた。
薄暗い部屋の中、シェリナも捕まっていた。がらんとした倉庫のような部屋で、小さな明り取りの窓が高い位置にあった。換気のためか、少しだけ開いている。
「やっと起きたんだ」
シェリナはまったく焦った様子もなくそう言った。
「いいざまね」
シェリナの嘲笑に、三千花は戸惑う。
「あんたはここで死ぬの」
シェリナが腕を上げると、彼女を拘束する縄は簡単にほどけた。
「晴湖が一緒じゃないのが残念だわ。体調不良なんて、運がいい」
何を言っているの。
言葉にならず、呻き声だけがもれた。
「あんたの悔しがるセリフが聞けないのもつまらないわね」
シェリナは三千花の猿ぐつわをほどいた。