聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
起き出した三千花は、朝食後に軽装に着替え、転移されたあの道路にも行ってみた。
道に這いつくばり、きょろきょろと見回す。何か手がかりになるようなものがないものかと。
動くたびに蹴られた箇所が痛む。
三千花は痛みに耐えながら地面を見続けた。
だけど劣化したアスファルトの黒いボコボコした表面が見えるだけで、特にこれと言って変わりはなかった。
「どうしたらいいのかな」
道路の端の方も探してみる。草がぼうぼうに生えている。そのしげみをかき分け、異世界の痕跡を探す。
何も見つからない。
ため息をついてしゃがみこむと、目の端に男女の足先が見えた。
顔を上げると、蓮月と優梨の姿がそこにあった。
変なとこ見られちゃった、と三千花は気まずく思った。
「何か御用ですか」
三千花は立ち上がり、たずねた。
「事件の話を聞きたくて」
そう言って蓮月はたい焼き屋の紙袋を差し出した。五枚くらいは入ってそうだった。
「家族で食べて」
「ありがとうございます」
戸惑いながら、受け取った。
「普通はありえないんですよ、警察から差し入れなんて。利益供与になるから。特別ですよ、今回だけですからね」
優梨は何回も念押ししてきた。
なんでたい焼きなんだろう、と思いながら、彼らと一緒に自宅へ行く。あの場所で話をする気にはなれなかった。
自宅の前の道路に何か落書きがされているのが見えた。
なんだあれ、と思った矢先。
玄関の前に、ありえない人物の姿を見た。