聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
「城の庭に移動させてね」

 三千花は後ろの席に荷物を置いて運転席に乗り、車を魔法陣の真ん中に動かす。
 ガソリンは満タンに近い。

 ふとニュースを思い出す。
 熊が平気で車に寄ってきて、運転手がパニックになる映像を見たことがあった。

 車って意外に弱いんじゃ。

 でも映画だと車って活躍してるし。
 でもあれは映画だし、たいていボロボロになるし。

 え、ちょっと待って、私の車がボロボロになるフラグってこと?

 そもそも車はあちらにはない。
 ということは自動車が突進してもあちらの人には「ひかれる」という概念がなくて避けないのでは。

 もっと言うなら、魔法の攻撃をくらったら爆発するのでは。

 やっぱり車は、と思ったところで下から強烈な光があふれた。





 電話から戻った優梨は、相棒の刑事がいなくなっていることに気がついた。

 道路に描かれた円の外で、三人の異邦人が疲れたように座り込んでいる。

 家の中から、中年の婦人が顔を出した。三千花の母だ。
「三千花、外で何してるの?」

 彼女は優梨と三人の座り込む男性を見て、首をかしげる。

 男性のうちの一人が三千花の母に気が付き、立ち上がる。
「お母様でいらっしゃいますか」
 金髪が言った。ユレンディールと呼ばれていたか。

 なまりのないキレイな日本語を話すなあ、と優梨は思った。翻訳の魔法アイテムを使っているなど、彼女は知らない。
 あとの二人は黒髪だが、顔つきや目の色から日本人ではないことを察した。

「三千花様はしばらく私の国に行くことになりました」
「はあ?」

 三千花の母は混乱していた。
 優梨も混乱して見ていた。

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