聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
* * *
優梨もユレンディールもエルンレッドも神官も、三千花の母によってとりあえず座敷に案内された。
「どうぞ、座布団の上に座って……ワカリマスカ、ザブトン」
日本語のまま、まるでカタコト英語のように、三千花の母は言った。
「初めて見ました。どう使うのですか」
ユレンディールが答える。
こうしてこう、と説明すると、見よう見まねで彼らは座った。
お茶を入れてくるから、と三千花の母は席を外した。
「不思議なクッションですね」
ユレンディールが言う。
「クッションとは違うんだけど……」
優梨が言う。ユレンディールはにっこり笑って彼女を見た。
優梨は一瞬見とれたあと、ハッとして自分の気を引き締める。
「ねえ」
エルンレッドは不安そうに小声でユレンディールに話しかける。
「雰囲気でもう一人送っちゃったけど大丈夫かな。こっちの人間だよね? 魔法も使えないよね?」
「知らないけどなんとかなるんじゃない?」
「知らないのにやったの?」
「知るわけないよ」
ユレンディールは肩をすくめてみせた。
三千花の母が入ってきて、たい焼きと湯呑みに入った緑茶を出した。
「いただきものですけど、どうぞ」
ユレンディールとエルンレッドは初めて見る食べ物に顔を見合わせた。神官は後ろでじっとしている。
「これは……緑茶?」
「そうですよ」
ユレンディールの質問に三千花の母が答える。緑茶ならあちらの世界にもあるし、湯呑みも東の国からの輸入品を見たことがある。
「こちらの魚を模したものは……」
「こうやって食べるんですよ」
いただきます、と挨拶をしてから優梨はかじってみせた。
「なるほど、いただきます」
ユレンディールとエルンレッドも続く。三千花の母は神官にもたい焼きを渡した。
「不思議な味。甘いんですね」
エルンレッドは目を丸くした。
「鯛の形をしてるからたいやきなの。中に入っているのはあんこと言って……」
優梨が説明する。
彼らの後ろで、神官は無言でたい焼きをかじっていた。