聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
 ダウナルドはしばらく考える素振りを見せたあと、答えた。

 アルウィードが襲撃現場を訪れ、場所だけを告げて去った。
 現場の兵士たちはすぐにそこへ向かった。
 指定された場所までは少し距離がある。急いでも時間はかかった。彼らは転移などの高度な魔法は使えない。

 到着したときにはすでに実行犯は何者かに殺されたあとで、聖母候補のシェリナも絶命していた。室内は血まみれだったという。そこには三千花もアルウィードもいなかった。
 連絡を受けた応援の兵士が投入されたが、何も手がかりはつかめなかった。

 二人がいないことで可能性は分かれた。アルウィードが三千花を無事に救い出したものの、どこかに身を潜めているのか。二人とも連れ去られたのか。あるいは、別の場所でもう殺されているのか。最悪の事態も想定しながら、生きている前提で捜査は進んだ。

 犯行に使われた家は治安の悪い地域にあり、もとは空き家だった。
 不審な馬車がその家の周囲で目撃されたが、よくある形の馬車で、持ち主を特定するには至っていない。

「実行犯は全員がごろつきでした」
「ごろつき……最後に見た人だけ、ちょっと雰囲気が違っていたけど」

 三千花はアルウィードに斬りつけた人物の特徴を言う。服装がごろつきたちと違っていた。
 アルウィードは身を守るための反撃でその人物を斬った。それは三千花の胸をしめつけるものがあった。
 ダウナルドは渋い顔で聞いていた。

「どこかの貴族の私兵かもしれません」
「しへい?」
 聞いただけでは、とっさに字が浮かばない。

「国が雇った兵ではなく、個人が雇った兵です」
「私兵ね。確かに貴族がどうとか言っていたような」
 三千花はぼんやりしていたときにごろつきが言っていたことを思い出して話す。

 大神官長が、とか実家が、とか断片的に聞こえたこと。だが何がどう関連しているのかさっぱりわからない、とも付け加えた。

 ダウナルドの表情はさらに厳しくなる。
「あの」
 どうしても聞きたいことがあり、三千花は声をかける。

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