聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
助手席には道案内のためにライエルが乗り、三千花の真後ろは蓮月、助手席の後ろ側にはレオルークが乗った。
門を出ると、石畳のせいで車がゆれ始めた。
アスファルト舗装は偉大だ、と三千花は思った。
街の人たちは見慣れない乗り物に驚き、対抗して走る馬車は慌てふためき、止ることもあった。
三千花はそれらを慎重に避けながら走る。スピードはさほど出せない。それでも馬車よりは早かった。
「こういう乗り物だったんだねえ」
レオルークは楽しそうに言った。
「どういう原理ですか。動力は?」
ライエルが尋ねる。
「……ごめん、私もよくわからない」
三千花は申し訳なく答えた。
「これ、何が入ってるんだ?」
蓮月は三千花のリュックを邪魔そうに抱えていた。
「見ていいよ」
言われて、蓮月は中を覗いてみる。
傘とフライパン、使いかけの上白糖一袋、胡椒の大きなボトル。これは500ミリリットルのペットボトルくらいのサイズがあり、そのまま使えるように大きな蓋がついている。そのほかカッター、靴下に入ったビー玉、などなど。
「この靴下のビー玉は、ブラックジャックのつもりか?」
「手塚治虫がどうしたの?」
「そうじゃなくて」
ブラックジャックは袋の中に砂やコインなどを入れて作られた殴打用の武器だ。
「砂糖はどういうつもりで?」
「マンガで粉塵爆弾? 爆発? ってやってるの見たことあるから」
「それはこの砂糖じゃ無理だ。しかも使いかけの一袋って、なめてんのか。もっと大量の粉砂糖とか小麦粉とかでないと無理だろ」
「えー!? そうなの?」
三千花は驚いて声をあげた。
粉塵爆発は可燃性の細かい粒子が空気中に一定の濃度で浮遊しているときに火気があると起きる。三千花の持ってきた料理用の砂糖一袋程度では不可能だ。