聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜


 * * *


 意識をとり戻したとき、アルウィードは上半身裸で椅子に座らされ、後ろ手に縛られていた。

 見知らぬ豪華な部屋だった。壁は白く、赤い絨毯(じゅうたん)が敷かれている。天蓋つきのベッドも白で、紗のカーテンは真っ赤だった。時計はなかった。窓はなく、おおよその時間もわからない。天井から吊るされた魔石のシャンデリアが、部屋を明るく照らしていた。

 不思議と背中に痛みはなかった。魔法によって治癒されたのだ、と見当をつけた。
 ならば、自分を捕まえた人物はまだ当分彼の命を奪わないだろう。

 アルウィードは魔法を試みる。
 が、何も反応はなかった。
「封じられているか……」
 魔法封印の陣は神殿で厳重に保管されているはずだった。

 こうして流出しているのは、神殿サイドに協力者がいるからだ。
 縄をほどこうと腕や体を動かす。が、微動だにしない。
 しばらく粘ってみたが、まったく縄が切れる様子はなかった。彼の体に擦り傷が増えただけだった。

 三千花がこんな目に遭わなくて良かった、とアルウィードは思う。

 幼い頃、殺されかけて思わず逃げ込んだ異世界。
 一人ぼっちで怖くて泣いていたら、三千花が話しかけてくれた。
 彼を慰めて元気づけてくれた。

 結婚の約束をして、ペンダントをあげた。彼の魔力を込めて。
 記憶を消すなど禁忌の魔法だった。だが幼い彼はそれを知らず、彼女を守るために必要だと思いこんでしまった。

 もっと早くに会いに行きたかったが、父である国王をどう説得し、どういう口実で彼女を妻に迎えるか、幼い彼にはわからなかった。

 そうこうするうちに彼女の場所がわからなくなってしまった。ペンダントに込めた魔力の減退が原因だった。

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