聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
 もう男性よけの効力もなくなり、三千花は良き相手を見つけて結婚しているかもしれない。
 半ば諦めながら、ときおり異世界へ行っては探していた。

 再会できたのは偶然で、とんでもない僥倖(ぎょうこう)だった。

 会ったら渡そうと持っていた指輪を、すぐにその手にはめた。と同時にはずれないように魔法をかけた。

 自分を襲った暴漢が三千花まで狙ったと気づいたときには血が逆流するほど怒りが沸騰した。
 とっさに自分の国に連れ帰り、彼女を聖母だと偽った。

 国を(たばか)ろうとしている。これは重罪だ。それでも彼は三千花とともにありたいと願った。

 ペンダントの魔力はほとんど切れているのに、彼女はまったく彼を思い出してくれなかった。
 それでも良かった。
 彼女がいてくれるだけで幸せだった。

 彼女の意に反しているのはわかっていた。
 それでも彼女を幸せにすることができたら帳尻は合う、と思った――思おうとしていた。

 だが、彼女はいつまでも彼を拒否した。

 帰さなくては、と思った。
 帰すならば自分との記憶など思い出さないほうがいいのかもしれない。
 そう思ってもいた。

 なのに彼女を見ると、それができなくなる。

 あと少しでいいからそばにいてほしい。
 あちらに戻った彼女をつい連れ戻してしまった。

 その後も彼女への防衛を理由にズルズルと引き伸ばし、結果、二度目の事件が起きた。

 自分の責任だ、と彼は歯噛みする。

 誘拐された三千花と再会したとき、助けるために元の世界に戻した。
 あのとき、魔力は一人を異世界に送るのが限界だった。

 三千花は彼の名を呼んで、手を伸ばした。
 彼を求めてくれた。

 それでいい。もうそれだけで。
 三千花が幸せになるのなら。

 アルウィードは異国の愛する人を思い、目を閉じた。

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