聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
 なのに彼は責任を取らない。
 彼女が22歳になるのに、まったく結婚する意志を見せない。普通、貴族の令嬢は20歳までには結婚しているというのに。

 業を煮やした国王が結婚式の日取りを決めて話を進めているが、彼はまったく他人事のようだった。

「レオルーク様はわたくしを苦しめました。名前すら覚えず、婚約者殿、と呼び続けました。そのせいで貴方までもわたくしを婚約者殿と呼ぶようになってしまいました。わたくしがどれほど悲しく思ったことか」
 ロレッティアはムチを握る手に力を込める。

「それでもアルウィード様のために、いつかレオルーク様と仲良く生きていく未来を思い描いておりました。聖母が――あの女が現れるまでは」
 ロレッティアはアルウィードを睨んだ。

「あの下賤な女は貴方よりも年上で、貴方の価値をまったくわかっておりませんでした。その上、汚らわしい異世界から来たと」
 ロレッティアは顔をしかめた。

「犯罪者の子孫がアルウィード様と結婚するなど、とうてい受け入れられません」
「あちらにはもともと人が住んでいた。勝手に流刑地にしてかの世界に住む方々を犯罪者扱いなど、許されることではない」

「おいたわしい。洗脳されてしまわれたのですね」
 ロレッティアは悲しげに口元を手で覆った。

「大丈夫です。わたくしが救ってさしあげますわ。ここにずっといてくださればいいのです。ずっとおそばでお仕えいたします」
「狂ってる」
 思わずつぶやいたアルウィードに、ロレッティアはクスクスと笑った。

「狂っております。貴方への愛ゆえに」
 彼女はそう言ってアルウィードの唇を舐めた。

「あとで治癒魔法師をよこして治してさしあげます。貴方の美しい体に傷が残るなんて嫌ですもの。だけどまた愛の絆をさしあげますわ。楽しみに待っていらして」
 ふふ、とロレッティアは笑う。

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