聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜


 * * *


アルウィードは倒れたまま放置された。
「くそ」
 椅子ごと前に倒れており、身動きがとれない。

「三千花には見られたくない姿だな」
 自嘲する。笑おうとして、体の痛みに顔を歪めた。

 早く三千花を助けにいかなければ。
 アルウィードは魔法を使おうと再度試みるが、やはり、何も発動しない。

『わかっていただけた暁には、額の無粋な魔法陣を消しますわ』

 ロレッティアの言葉が蘇る。
 封印の魔法陣がそこにあるということではないのか。

「額か……」
 入れ墨ならば消せなくなる。張り紙がされている様子はない。ということは、インクか何かで直接額に描いたのか。

 アルウィードは首を伸ばして額を床にこすりつけた。
 そうしてしばらくして魔法を使おうと試すが、やはり発動しない。

 簡単には消えないか、と嘆息(たんそく)する。
 だが、彼はあきらめない。
 何度もそうしているうちに、天井からどんどんと叩きつけるような音がした。

「アルウィード! そこにいるの!?」
 かすかに聞こえたのは三千花の声だ。

 喜びと恐怖が同時に湧いた。
 三千花が近くにいる。それは単純に嬉しい。だがここはロレッティアの屋敷だ。彼女がどんな目に遭わされるかわからない。

「三千花! 逃げろ!」
 アルウィードは叫び、自らの額を床に打ち付けた。

< 259 / 317 >

この作品をシェア

pagetop